【チェンバロの日!2018無事に終了いたしました】
2日間に渡り開催された「チェンバロの日!2018」、140名近いお客様にご来場いただき、無事に終了いたしました。
ご来場いただきましたお客様、講師、演奏家の皆様、松本記念音楽迎賓館、及び関係者の皆様ありがとうございました。
2018年度もどうぞ日本チェンバロ協会へのご声援よろしくお願いいたします。
チェンバロの日!2018年は、水戸茂雄氏の講演でスタートです。リュート奏者のお話を間近に聞ける貴重な機会に、会場には満員のお客様が訪れました。
氏は早速リュートを取り出し、豊富な譜例を用いながら、スティル・ブリゼとノン・ムジュレについて、また、バロックリュート特有の奏法や、タブラチュアに書かれた記号について解説されました。
リュートに影響を受けたクラヴサン作品を演奏する上で大切な手がかりを多数示されましたが、水戸氏が繰り返しお話されていたのは、縦ではなく横の流れで、多声部で捉えるということでした。譜面をどのように捉え、和声や旋律をグループづけしていくのかなど様々な方法を実演され、さながらレッスンを受けているような充実した講演となりました。
チェンバロの日!初日19日のAホールでは午後3時から有田千代子氏のチェンバロリサイタルが開かれ、急ごしらえの座席追加で超満員の会場は熱気に包まれました。F.クープランの作品から舞曲を主にした円熟期のものと標題のついた作品のみで纏められた晩年のものから2つのオルドゥルを並べ、それぞれに符合するプレリュードを配したプログラム。作曲家の真骨頂であるオルドゥルはいずれも高貴な音楽に溢れていました。半音階の微かな音の変化が複雑に混じり合い、恰も一滴のしずくが水面に幾重もの波紋を重ねるような、クープランならではの薫り立つような世界に包まれました。
演奏会後に設けられた「来場者試奏タイム」参加者約20名、順々に演奏するうちに誰からともなく拍手が起き始め、さながら発表会の場と化しましたが、どなたも日ごろ弾く機会の少ない二段楽器に触れ、チェンバロを心から楽しんでおられる様子でした。
(写真は5月20日の来場者試奏タイムの様子)
Bホール、Cホールの試奏風景
19日、17:00より夕暮れのBホールで、石川陽子氏によるコンサート「J.S.バッハに見る、フランス様式の作品」が行われました。F.クープランの作品、J.S.バッハがフランス様式の影響を受けたドイツ人作曲家の作品、バッハのパルティータ第4番が演奏され、美しい音でしっとりと始まったクープランのプレリュードから迫力のあるバッハまで、変化に富んだ50分のコンサートでした。
小穴晶子氏の素敵な笑顔とともに 講演が始まりました。
画家、思想家の言葉や絵画を使用し、クープランの表題音楽に迫り、美学、思想、音楽、そして、人類が発展してきた過程を見るかのような、壮大で奥深い内容でした。
また、講演最後には終了時間が迫る中、聴衆との熱い質疑応答が繰り広げられました。
クープランの作品を演奏する演奏家への、クープラン自身からの熱いメッセージとして、クラヴサン曲集第3巻の序文を読み上げられ、講演は締めくくられます。
"遊ぶことはとても大切なこと。子どもたちは真似をすることで遊び始め、また遊ぶことによって好奇心や探究心が発展していく…
芸術家の方は、いつまでも子どもの心を忘れないでほしい。"
小穴氏の言葉が深く心の奥に響き渡る一時間でした。
「チェンバロの日!2018」、2日目の演奏会はAホールで行われた、小川園加氏による「オルドルに描かれた女性たち」です。フランソワ・クープランのオルドルの中から、女性にまつわる曲が次々と演奏されました。小川氏の巧みな演奏表現や音の表情によって、私たちは登場人物や曲に描かれた状況を思い浮かべ続けました。
クープランの描いた肖像画を見て回ったような・・素敵な演奏会でした。
今回の最後の講座には30名ほどの参加者が最前列からぎっちりと座って開講を待っていました。あらかじめ「モニターに映す画像が細かいので、なるべく前にかぶりついて!」という講師の希望があったからです。なるほど現代地図と古地図、風景版画や最近の写真を比較しながらのお話。F. クープランや当時の音楽家たちがどこに住んで、どこへ引越し、どこで活動したのか、音楽活動の盛んな地域はどう変遷したのか・・・など、まるで時空を超えたパリの街音楽めぐりツアーに参加しているかのようでした。
愛らしいキャラクター、チェンロバ先生とプレクト・ラムちゃんがご案内する、<チェンバロの日!>限定クイズ番組。楽器・作曲家・楽譜など、様々な角度から問題が出され、ちょっとした豆知識も織り込まれていて、チェンバロって何…?という方からプロのチェンバロ奏者まで、皆さんすっかり夢中に。次々と現れる不思議な映像や音楽に惑わされ、珍問難問に翻弄される方が続出?!でしたが、笑い声の絶えない和やかな雰囲気で、あっという間の楽しい20分でした。当日流れたクイズ番組は、初級者編・上級者編とも、YouTube協会公式チャンネルで配信中!
ぜひ珍問難問にチャレンジしてみてくださいね♪
今年も多くの親子で賑わった、このコーナー。ただの紙とあなどることなかれ、久保田チェンバロ工房のスタッフによると、作成後しばらく保管しておいたミニチュア・チェンバロには不思議なことに、本物の楽器と同じ箇所に、同じような経年変化の曲がり等が現れるとか!
子どもたちは先入観にとらわれないひらめきで、カラフルなミニチュア・チェンバロを次々と作り上げ、大人たちは童心にかえって無心に工作を楽しむひととき。ゆったりとした時間が流れるこの場所で、世界でひとつだけ、自分だけのチェンバロが、たくさん生まれました。
心配されていた雨もあがり、爽やかな5月の光が差しこんだレセプションルームは、恒例となった「チェンバロ・カフェ」から立ち昇る、曳きたての芳醇なコーヒーの香りで満たされた安らぎの空間でした。そこかしこに当代きってのチェンバロ奏者、研究者、そして愛好家、夢にあふれた若者の、垣根を越えた歓談の輪ができ、また、アカデミア・ミュージックによる楽譜販売、ユニバーサル株式会社による古楽CD販売、日本チェンバロ協会によるCD、書籍、グッズ販売も行われました。一日目の催し後には懇親会が行われ、今年も茗荷谷のイタリアンレストラン「イン ボスコ」のオーナーシェフによる美味な料理の数々が並び舌鼓をうつ中、出演者の方々から「チェンバロを愛するものの集まれる得難い機会である」、松本記念音楽迎賓館長から「これからも応援を惜しまない」、久保田彰氏から「永遠に懇親会総監督を続ける」などの言葉をいただき、今後も「チェンバロの日」が皆様に愛され、貴重な機会として続いていくことを確信しました。
フランソワ・クープランの生誕350年を記念して行われた、「フランソワ・クープラン『クラヴサン曲集』(全曲)リレーコンサート」。
エントリーされた方38人とスタッフ13人が力を合わせて、全220タイトルを弾き切りました!!
小さいお子さんから、ご年配の方まで、愛好家の方から、専門で勉強なさっている方まで、様々な方がクープランを、そしてチェンバロを愛している姿を拝見し、胸が熱くなりました。
聴いてくださるお客様も途切れることがなく、熱気がムンムン。お部屋が満杯になることもしばしばでした。
みんなで成功に導いたこの「リレーコンサート」。きっと、天国のクープランもほほえみながら聴いてくれていたことと思います。
皆さん、本当にありがとうございました!