「チェンバロの日!2019」2日間ともに、素晴らしい天候に恵まれ、122人のお客様にご来場いただきました。
ご来場いただきましたお客様、ご支援、ご協力いただきました関係者の皆様に心よりお礼申し上げます。
写真は、毎年恒例のスタッフ記念撮影!
また来年!
今年のチェンバロの日!の各イベントのレポートを写真とともにお届けします♪
5月11(土)Bホール コンサート
辰巳美納子
【師弟饗宴 フレスコバルディとフローベルガー】
調律法:ミーントーン
カラリと晴れた空のもと、初日のコンサートは師弟関係であったフレスコバルディとフローベルガーの曲からスタートです。調律法は辰巳さんもお好きだとおっしゃるミーントーン。客席は満席です。
チェンバロのソロのコンサートでミーントーンが使われることは珍しいそうですが、さまざまに異なる雰囲気や場面を持つ曲をミーントーンの響きで聞くことができ、贅沢な時間を過ごせました。
終演後も、チェンバロの周りには人が集まり、辰巳さんの解説のもと、響きを味わったり、ショートオクターブや分割鍵盤を確かめたりするなど、おおいに賑わっていました。(梶)
●11日㈯ Aホール 2:30開演
演奏 中川 岳
「フランソワ・クープランとクラヴサン音楽のその後」
「いろいろな調律」のコンサート2番目はダランベール音律によるF.クープランとクラヴサン音楽その後」で演奏者は中川岳氏でした。
あまり馴染みのない音律のせいか補足資料まで用意され理解の助けになりました。
ダランベール音律とは当時フランスで普通に使われていた音律名で、プログラムはこの不等分音律の特徴を生かした曲で組まれた興味深いものでした。
F.クープラン、P.フェヴィリエ、J.デュフリ、A-L=ルイ.クープランの4人の作曲家が取り上げられ、「純正」の際立った美しさや、「うなり」により生まれる感情の起伏が自然に立ち上ってきて聴く側に届き、音律というものが曲の背景にあることを改めて認識させられました。氏の音律とは「スパイス」のようなものという説明も印象的でした。
☆11日 久保田慶一「聴衆を音楽の世界に導くにはどうすべきか」
1日目16時からの講演は、ほぼ満員およそ50名の聴衆を前にところどころ笑いが沸き上がる和やかな雰囲気に終始しました。「演奏家」「聴衆」という二つの視点から見える演奏会の景色が、「双方向につながる音楽の力」によってどのように成功に導かれるか、がとても分りやすい具体的な例で示されました。 聴けばわかるはずだ、という驕りを戒めつつ、知識を伝えることがあってもそれは聴く体験を上回るものではない、そしてその知識はどのような聴衆かによって十分に考えられた切り口(エントリーポイント)でなければならないということでした。演奏する側にとっても聴く側にとってもこれからの音楽生活に大きなヒントをもらえる講演でした。 H.A.
サロン
ちょっと、ひと息、ちょっと、ひと弾き。カーテンの隙間から見える緑が眩しいお部屋には加屋野木山2018年製作一段チェンバロが待っていました。
いつでも弾ける状態で置いてあり、側には館所有のプレイエル社製モダンチェンバロと大理石のテーブルに革張りのソファー。
楽器に触れてメロディを奏でてみたり、ソファーに座ってお喋りしたり、催しの合間、寛ぎの時間が流れていました。T. T.
●12日㈰ Aホール 10:00開演
「フリーコンサート」
12日10時よりAホールで7名の応募者によるフリーコンサートが開かれました。
世代を問わず、チェンバロを愛する方々の真剣な演奏にひきこまれました。
客席からは時折感嘆のため息がもれることもあり、温かい拍手が送られていました。
プログラムは以下の通りです。
J.S.バッハ作曲 フランス組曲第1番、平均律クラヴィーア曲集1巻4番、パルティータ第5番、
L.クープラン作曲 組曲ト調 、チャイコフスキー作曲 薔薇のアダージオ(連弾)、リゲティ作曲 ハンガリー風パッサカリア、 スウェーリンク作曲 半音階的幻想曲、マルシャン作曲 クラヴサン曲集第1巻組曲第1番ニ短調、.マルチェロ作曲バッハ編曲 協奏曲ニ短調より3楽章
Cホール
館の奥にあるCホールでは、久保田工房のウォルナット(西洋クルミ材)モデルのスピネットが、いつでも弾ける状態で展示され、2日目の午後は、ペーパークラフトのミニチュアチェンバロを作ろう!のコーナーが行われました。
座談会とコンサートの合間の僅かな時間に足早に訪れクラフトセットを購入される方が何人もいらっしゃいました。
ご自宅に戻られてチェンバロの日!で過ごした時間に想いを馳せながら、きっと自分のオリジナルチェンバロを作られたことでしょう。T. T.
「鍵盤楽器の発展と調律」
テーマは鍵盤楽器の調律です。座談会は80年代の調律事情に始まり、アリストテレスに遡って調律の語源が「過不足のない、程好く中庸な状態」を指すと説き、また物理的なインハーモニシティの宿命にも触れ、最後に調律は機械的な数値ではなく耳の感覚に拠って行うことが肝要との結論に至りました。話題は他にも、ヴェルクマイスターやケプラーを例にバロック期の思想の根底に古代から流れる倫理観、バッハ自ら指定した調律の様々な解釈、12平均律ではない平均律などなど、大変豊富でした!音楽の良さを最大限に引き出す調律をサラダドレッシングの調理に例えて生き生きと語るスピーカーは70名超の聴衆を90分間惹きつけてやみませんでした。
(大村桜子)
●12日㈰ Aホール 15:00開演 演奏 家喜美子
「バッハへの誘い」
「いろいろな調律」のコンサート、2日目の午後にヴェルクマイスターⅢの調律法を用いた、家喜美子氏による「バッハへの誘い」が開かれました。
Aホールには、チェンバロの音の減衰カーブを大切にするために、部屋の対角線の長い距離を利用してチェンバロが置かれていました。
プログロムはバッハに影響を与えたG.ベームとJ.S.バッハの作品から、F-Dur、d‐moll、c‐mollの組曲やトッカータで、F-DurのF-A-Cの和音は純正5度と長3度で、穏やかな澄んだ響きを生み出していました。
「音律という楽譜 調律という演奏」
今年の「チェンバロの日」最後を飾るイベントは、チェンバロ製作家の加屋野木山氏による調律の講座でした。夕方にもかかわらず60名近い方々が入られる盛況ぶりに、皆さんの調律への関心の深さを実感しました。加屋野氏ご本人による軽妙なトークで始まった講座は、本題では分かり易い映像を通しての解説に。お話と共に実際に楽器を映しての実演があり、耳と目で詳細に体験する事ができました。常々疑問に思っていた点も霧が晴れる様に解消されました。加屋野氏の穏やかな語り口の背景に時折入る鳥の声や、聴衆の目を画面に釘付けにする某有名マスコット犬が和やかな雰囲気を醸し出し、難しく捉えがちな調律を楽しく学べた有意義なひと時でした。
(恒見典子、宮野美江子)
チェンバロを愛する方々に、広くお楽しみいただきたい、と加屋野木山さん(講座名「音律という楽譜 調律という演奏」)より、調律講座動画をいただきました。どうぞご覧ください!
加屋野木山さんには、今年の「チェンバロの日!2019」に2台のチェンバロを会場にご提供いただきました。
楽器の詳細は 以下URLをご参照ください。
「チェンバロの日!2019」
チェンバロを愛する人々が大集合するイベント「チェンバロの日!」
今回のテーマは「いろいろな調律」です!
好奇心と探求心をくすぐる様々な企画を、どうぞご期待ください。
【日時】 2019年5月11日(土)・12日(日)
【会場】 松本記念音楽迎賓館
東京都世田谷区岡本2-32-15
【チケット】一般:4,000円
日本チェンバロ協会チェンバロ会員:3,000円
高・大学生:2,000円(要学生証提示)
(中学生以下無料)
【お申し込み・予約】下記申込フォームまたは、
「チェンバロの日!」専用アドレス!cembaloday@yahoo.co.jp
【主催】日本チェンバロ協会
【協賛】国際古楽コンクール<山梨>
【後援】公益財団法人 音楽鑑賞振興財団
【協力】アトリエ響樹/久保田チェンバロ工房
・内容と出演者 (敬称略)
〈講演〉
11日 久保田慶一「聴衆を音楽の世界に導くにはどうすべきか」
12日 加屋野木山「音律という楽譜 調律という演奏」
〈コンサート〉
11日 辰巳美納子「フレスコバルディとフローベルガーの師弟饗宴」
(調律:ミーントーン)
11日 中川岳 「フランソワ・クープランとクラヴサン音楽のその後」
(調律:ダランベール)
12日 家喜美子
「バッハへの誘い」
(調律:ヴェルクマイスター第3)
〈座談会〉
12日「鍵盤楽器の発展と調律」 司会:大塚直哉
桒形亜樹子・横田誠三・藤原一弘
〈フリーコンサート〉
12日